迷宮からお城まで。パルマ郊外を旅する

迷宮からお城まで。パルマ郊外を旅する

ローマ近郊に住む私にとって、ラツィオ州から外に向かう旅は、隣接しているウンブリア州やトスカーナ州が圧倒的に多いのが実情です。北イタリアや南イタリアにも興味があるものの、身近な場所に赴くだけで、すでに見どころがある教会、美術館、景色、そしておいしい食べ物があるのですから、その先を見る余裕がないといっても過言ではありません。しかし、誰もが美術館や教会に興味があるわけではないのです。ましてや、小学生を連れての旅行となれば、家族連れでも飽きずに楽しめることが最優先になってきます。そこで今回ご紹介したいのは、子ども連れでも楽しめるパルマ近郊にある「迷宮」です。

竹林でつくられた迷宮byイタリアの貴族!

竹林でつくられた迷宮byイタリアの貴族!

日本でもいっとき、迷路が流行したことがありました。西洋では、迷宮とは古代ギリシア時代の「クレタの迷宮」から始まり、哲学やキリスト教の分野においても重きをなすテーマとなってきました。ヨーロッパの各地にある大聖堂の床には、迷路の絵が描かれていることも多いです。キリスト教の世界では、巡礼やさまざまな葛藤を乗り越えて聖なる場所にたどりつく、という意味があるそうです。

このように文化としても奥が深い迷宮にほれ込み、2005年から10年というプロジェクトを経てパルマの近郊に竹林による「マゾーネ迷宮」を造り上げたのが、貴族出身で出版業を営むフランコ・マリア・リッチという男性でした。リッチ氏が個人的にコレクションした美術品や彼が過去に出版してきた美しい書籍の展示もされていますが、主役は、なんといっても迷宮! 私たちが訪れたのは、あいにくの雨の日でした。迷宮というミステリアスな雰囲気に加えて、生い茂る竹がこれまた神秘的です。くわえて、エミーリア・ロマーニャ独特の、霧にけぶるような空気が、さらに哲学的な雰囲気を醸し出していました。カサをさしながら迷い迷うこと40分、ようやくゴールのピラミッドに到達。ゴールに到達したごほうびとして、物見台から迷路を見下ろすことができます。

中世のお城が鎮座する町でご当地のボロネーゼを

中世のお城が鎮座する町でご当地のボロネーゼを

小腹が空いたところで、お昼の情報収集です。ローマ方言でああでもない、こうでもないと話をしていると、地元のお兄さんがおいしいレストランを教えてくれました。各地の方言が強いイタリア、彼の話を聞いていた娘は「あの人、外国の人?」と不思議そうな顔。イタリア語を話していても、イントネーションが変わると趣も変わるのです。この親切なパルマの男性が教えてくれたレストラン「トラットリア・デル・テアートロ」は、迷宮から車で10分ほどのところにあるフォンタネッラートという町にありました。水を満々とたたえる堀に囲まれた城塞を中心に広がる町です。ラツィオやウンブリアの城塞と異なり、ポー川流域の平地に立つお城というのも新鮮なものです。「サンヴィターレ」という名のついたこのお城は保存状態が非常によく、そこだけ見ていると、まるでタイムスリップして中世に紛れ込んだ気分になります。

エミーリア・ロマーニャ州は、パルミジャーノ・レッジャーノチーズの本拠地であり、ボロネーゼがおいしいことでも有名な地域です。私たちも、オーソドックスにそのパスタをいただきました。食の伝統を感じさせる、気取らず、しかし奥の深い味わいです。

「イタリアでもっとも美しい町」のひとつ、カステッラルクアート

「イタリアでもっとも美しい町」のひとつ、カステッラルクアート

見どころがたくさんあるパルマ周辺ですが、カステッラルクアートもその一つ。お昼を食べたフォンタネッラートからは、車で30分ほどのところにあります。パルマからも近いのですが、ピアチェンツァのテリトリーに入ってきます。「イタリアで最も美しい町(I borghi piu` belli d’Italia)にも選ばれたこの町。美しい町並みと少し朽ちた「ヴィスコンティ城塞」に、息をのまされます。

その美しさは演劇関係者にも愛でられ、映画『レディホーク』の撮影が行われたほか、高名な演出家ダーリオ・フォーがこの町で演劇を開催したこともありました。数世紀を経た城塞は、ミラノの実力者であった貴族ヴィスコンティ家によって建造されたもので完全な形で残っているわけではありません。しかし、かろうじて残る塔は入場料を払えば上ることができます。完全な形ではなくても、周囲の山々の緑と溶け合う城塞は「兵どもが夢のあと」といった風情を感じさせる情緒にあふれています。城門や石畳の道の向こうから馬に乗った騎士たちが登場しそうな町の雰囲気を心ゆくまで楽しみ、この町で撮影された『レディホーク』を帰宅後に鑑賞するのも一興です。

さらにパルマは、実は法王庁ゆかりの貴族が直接統治をしていたこともあり、ナポレオンの二番目の奥さんによっても治められていた格式高い町です。周辺にも、珠玉のような宝を隠し持つ小さな町が点在していることを実感した旅行でした。

マゾーネ迷宮(Il Labirinto della Masone di Franco Maria Ricci)
住所 Strada Masone 121 43012 Fontanellato (PR)
TEL0521 827 081
営業時間夏季(4/1~10/31)10:30〜19:30(最終入館は18:00) 冬期(11/1~3/31)9:30〜18:00(最終入館は17:00)
休日火曜、12/25、1/1
トラットリア・デル・テアートロ(Trattoria dell Teatro)
住所 Pl. Verdi, 3/5 43012 Fontanellato (PR)
TEL0521 822 257、349 871 9081
営業時間12:00〜14:00、20:00〜23:00
休日月、火曜
ヴィスコンティ要塞(Rocca Vincontea)
住所 Giardini Giovanni Paolo, 3, 29014 Castell'Arquato(PC)
TEL0523 803 215
営業時間(11~2月)土・日・祭日10:00〜13:00、14:00〜17:00 平日はガイド付き見学のみ10:30、14:30、16:00 (3~10月)火~日曜10:00〜13:00、15:00〜18:00
休日月曜 ※4・5・9月は月曜日も開館。7〜8月は開館時間に変更が多いため要チェック

井澤 佐知子

イタリア生活十数年、ローマ近郊の田舎での生活ほぼ7年。 坂道を上るトレッキングシューズとリュックサックが必須の毎日。ローマの南、風光明媚なカステッリ・ロマーニを拠点に、家族とともに風のようにイタリアのあちこちを物見遊山中。 趣味は書籍の大散財。イタリアの美術、食文化、歴史をこよなく愛する。

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