これぞ「Km0(キロメートル・ゼロ)」!できたての手作りモッツァレッラチーズのお味は? その【1】

これぞ「Km0(キロメートル・ゼロ)」!できたての手作りモッツァレッラチーズのお味は? その【1】

南イタリアを代表するフレッシュチーズ、モッツァレッラ。プーリアでもみな、大好きです。今回の記事では、私が住むプーリア中央部のヴァッレ・ディートリア地区にて飼育された乳牛のミルクを使って、モッツァレッラチーズ作りを学ぶ様子をご紹介します。Km0 (ゼロキロメートル=キロメトロ・ゼロと読みます)は、イタリアの地産地消運動の合言葉。できるだけ近くで生産された食物を食べようということですが、それは“食べることは生きること”を実践する道標にもなります。

まずは牛さんと酪農家さんにごあいさつ。搾りたての牛乳を分けていただきます

まずは牛さんと酪農家さんにごあいさつ。搾りたての牛乳を分けていただきます

モッツァレッラチーズの材料は、牛乳とレンネットと呼ばれる凝乳酵素と塩。その中でも牛乳の質がおいしさの決め手となります。スーパーなどで売っている加熱殺菌された牛乳では、モッツァレッラを作ることはできません。まずチーズを作る日の朝、搾りたての生乳を近くの酪農家のお宅まで買いに行くところから、仕事は始まります。自宅の裏の牛舎で15頭ほどの乳牛を飼育しているこのご家族とは遠縁の親戚にあたり、家族ぐるみでお付き合いさせてもらっています。通常は搾乳された生乳はヴァッレ・ディートリア地区の酪農家協同組合が運営するチーズ工房へと出荷していますが、今回は特別にお願いして分けていただきました。

いつできるの? お天気と牛乳のいう通りにしかできない

いつできるの? お天気と牛乳のいう通りにしかできない

モッツァレッラの作り方を教えてくださるのは、お隣に住むジョヴァンナさん。マッセリアと呼ばれるプーリア独特の農園で生まれ育った彼女は、小さい頃から両親の元で家畜や畑の世話、チーズ、パン、パスタ、野菜の保存食など、手作り食品の作りかたを学んできました。今では食育の一環として、マッセリアを訪れる人々にチーズ作りのデモンストレーションなどもしています。彼女の自宅のチーズ作り専門の部屋で、搾りたての生乳を温めるところからレッスンは始まります。「ところで、何時間かかるの?」と聞くと「4時間でできるかも知れないし、6時間かそれ以上かかるかも知れないわ。だってその日によって、牛乳の質が違うから」との答え。温まった牛乳に凝乳酵素を入れるタイミングや温度が下がる時間などにもよって、牛乳が固まる速さが変わってくるらしいのです。これは思ったより、デリケートな作業になりそうです。

心のリトマス試験紙。優しい人じゃないと酸っぱくて固くなる?

心のリトマス試験紙。優しい人じゃないと酸っぱくて固くなる?

凝乳酵素を入れてしばらくすると、牛乳が固まってきます。ちょうどよい具合に固まったかどうか落ち着いて見極め、柔らかい杏仁豆腐ぐらいの硬さに固まったところを、ヘラでくずします。ジョヴァンナさんは、おいしくできますように……と、祈りの気持ちを込めて、まず上下左右に十字をきるようにヘラを入れるとのこと。このくずし具合が、できあがりの固さに大きく影響するのです。一度崩したものはもう元には戻らないので、一挙一動心を込めて。あとは崩した牛乳の塊がびろーんとどこまでものびるようになるまで、発酵するのを焦らずにひたすら待つ。そのときのいろいろな条件で、この待ち時間が微妙に変わってくるのです。日常生活の中ではこの間、ほかの作業をするわけですが、放っておけばよいということではありません。だいたい4時間ぐらい過ぎたら状態を確かめるために、ひとつまみ取って伸び具合を確かめます。何度かこの作業を繰り返す間、モッツァレッラのよりよい発酵を我が子の成長を祈るかのように願いつつ、「そのとき」を待つのです(次回の記事へと続く)。

大橋 美奈子

プーリア中央部に位置するヴァッレディートリアはのどかな白い田舎町に囲まれトゥルッリの点在するおとぎの国のような田園地域。都会育ちの根無し草だった私がこの地に魂を掴まれて気がつけば20年。プーリアと日本の架け橋となるべく(有)ダプーリア設立し、スローライフを実践中。プーリアの魅力を発見するお手伝いが出来ればこれほど嬉しい事はありません。

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