ラッダ・イン・キャンティのワイナリー「レルタ・ディ・ラッダ」

ラッダ・イン・キャンティのワイナリー「レルタ・ディ・ラッダ」

350以上のワイナリーがひしめくキャンティの中心地区、キャンティ・クラシコエリアにあるキャンティ・クラシコワイナリー「レルタ・ディ・ラッダ」。今回の記事では、白ブドウと赤ワインの混醸ワイン「ドゥエ・エ・ドゥエ」をはじめ、自然の醸造を行い個性的なワインも造る、その若く小さなワイナリーをご案内!

24歳で自分のワインを造るためワイナリーを立ち上げたディエゴ・フィノッキ

24歳で自分のワインを造るためワイナリーを立ち上げたディエゴ・フィノッキ

シエナの農業学校「イスティトゥート・テクニコ・アグラリオ・ディ・シエナ」を卒業したディエゴは、フィレンツェ大学の醸造学科へ進むことを決意。と同時に、地元ラッダ・イン・キャンティ村の大手ワイナリーであったカンティーナ・ディ・ラッダで働き始めます。ワイナリーで頭角を現した彼は、なんと、学生でありながら、瞬く間に醸造責任者という地位を得ました。しかし彼が24歳の頃、卒業までの試験も少しとなったときに転機が訪れました。地元ラッダの農家が3ヘクタールのブドウ畑を売りに出していたのです。すばらしい環境で、醸造のプロとしても成長させてくれたカンティーナ・ディ・ラッダでしたが、職を離れることに迷いはありませんでした。

畑を購入し、若くしてブドウ畑のオーナーとなった彼は、たった一人でマネージメントをこなしました。当初はできる限り畑でのブドウ造りに集中し、ワインとしてはベースのテーブルワインを造りました。最初の3年間は、なんとアンティノーリやフレスコバルディがそのクオリティーを認め、ワインを購入。そして2009年ヴィンテージからは、最良のブドウを使用した自社のキャンティ・クラシコを生産することにしました。

自然に、ブドウ由来のワインを

自然に、ブドウ由来のワインを

オーガニックを実践しつつも、個性的で伝統と革新を取り入れたワインが「ドゥエ・エ・ドゥエ」というラベル。もともと彼が購入した畑は、1970年初頭の畑。つまり、50年近い樹齢の畑で、仕立てかたも当時のままです。当時のトスカーナでは同じ畑の中、同じ垣根の列でも違う種類のブドウ品種を植えるということが多々ありました。彼の畑も同様で、畑の中にサンジョヴェーゼ種とカナイオーロ種の黒ブドウ。そしてトレッビアーノ種とマルヴァジア種の白ブドウが混ざって植えてありました(現代ではブドウ品種ごとに畑を作るのが一般的)。

ディエゴはその畑の特徴を逆手に取り、そのすべてを混醸したワインを造り始めました。ドゥエ・エ・ドゥエというのは「2と2」という意味で、品種配合の数のことを指しています。

昔のキャンティ造りでは白ブドウの混醸が認められていたというのもあり、このレシピは古きキャンティの造りを連想させるユニークなものになりました(現在キャンティ・クラシコは法律で白ブドウの混醸が認められていない)。それは、サンジョヴェーゼ約60%、マルヴァジアとトレッビアーノで30%、10%のカナイオーロです。

収穫は全て同じ日に行い、破砕せずそのまま房ごとステンレスタンクの中に入れて放置します。重さでゆっくりと果汁が抽出され、4〜5日間温度を一定におさえながらマセラシオン・カルボニックのメソッドを利用し、成分を出していきます。その後、軽いプレスをして果汁だけを移し、少し温度を戻して10日間ほど通常発酵を行います。

また、発酵が終わりきる直前、糖がまだ残っているタイミングで別に収穫しておいた少し干した白ブドウを加え、再発酵(ゴヴェルノ・トスカーノというキャンティにコクを与えるために使われていた製法の白ブドウ版)。すでにアルコール化が進んでいるワインに発酵のためのブドウを加えるので、二度目の醗酵では酵母の働きが非常に遅くなり、約1カ月半醗酵が続くそうです。その後セメント(コンクリート)のタンクで10~11カ月貯蔵、その後ボトリングして出荷となります。こちらは、彼ならではの伝統を踏襲しつつも、挑戦的なラベルになっています(年間3500本ほど)。

サンジョヴェーゼのクローンとそのポテンシャル

サンジョヴェーゼのクローンとそのポテンシャル

またキャンティ・クラシコのリゼルヴァボトルに関しては、特殊なサンジョヴェーゼ種のクローンを使用しています。一般的なワイナリーでは、リゼルヴァに関しては、古い樹齢の畑だったり、ブドウの選定によってリゼルヴァのストラクチャーを造り出すケースが多いですが、ディエゴは2006年にブドウ畑を購入した時に、1ヘクタールのみ新しく植え替え、リゼルヴァ専用の畑としました。土壌の性質の他、特殊なサンジョヴェーゼのクローンを使用することにより、リゼルヴァラベルに相応しいポテンシャルを生み出そうと考えました。このクローンはブドウの房自体が小さく、実も小さい(果汁は少なく果皮の割合が大きくなる)。そして選定せずとも、自然に3~4房しかならないという特徴があります。一般的なサンジョヴェーゼが一つの樹から600~800gのブドウが得られるとした場合、このクローンは200~250gしか房を作らないそうです。このことにより、大きなコンセントレーションを伴うブドウが、選定せずとも自然と作られるのだそうです(収穫量もキャンティ・クラシコの法律で認められている量の3分の2ほど)。
また、ブドウの木が悩みやすい粘土質土壌の性質もあり、この畑では安定したブドウの生産に8年かかったそうです(通常は3~4年ほどで結実するようにになる)。
当初は何でこんな大変なクローンを植えてしまったのだと後悔しかけたそうですが、我慢のかいもあり、13年目にして計画が実を結びつつあります。

若くして独立し、その情熱で自分のワイン造りの夢を手に入れたディエゴのワイン。彼の冒険は始まったばかりです。それはワイン造りという坂道(レルタ)を登りきるまで、続くでしょう。お近くまでいらした際には、ぜひ訪問されてはいかがでしょうか(ラッダ・イン・キャンティ村まではシエナよりバスがでています。シエナ鉄道駅からSUTAバスで約1時間)。

レルタ・ディ・ラッダ(L’Erta di Radda)
住所 Case Sparse il Corno 25, 53017 Radda in Chianti(SI)
TEL328 40 40 500
営業時間日により異なる。要予約
休日日曜
HPhttps://ertadiradda.it/

鈴木 暢彦

トスカーナ州シエナ在住。2009年渡伊。シエナの国立ワイン文化機関『エノテカ・イタリアーナ』のワインバー・ワインショップにて5年間ソムリエとして勤務。2015年~2018年までシエナ中心街にてイタリア人と共同でワインショップを経営。現地ワイナリーツアーも企画し、一般からプロの方までのアテンドで100軒以上のワイナリーへ訪問。また、日本へのイタリアワイン輸出のサポート業務も行い、イタリアワインの日本マーケットの構築に貢献している。イタリアの著名醸造家ヴィットーリオ・フィオーレ氏、パオロ・カチョルニャ氏が手がけるワインも日本へ紹介。資格・・・AISソムリエプロフェッショニスタ。

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