イタリア最古の青銅版やろうそく祭り-歴史の中の絵巻物語を味わえる街グッビオ

イタリア最古の青銅版やろうそく祭り-歴史の中の絵巻物語を味わえる街グッビオ

古く美しい街並み、豊かな緑、青空にそびえる教会……これらはどれもイタリアの小都市を語る上では欠かせない要素ですね。中でも“緑のハート”と呼ばれるウンブリア州はイタリア半島の中心に位置し、深い歴史やどっしりとした土着的な魅力に溢れた州。そんなウンブリアの北東にあるグッビオは、マルケ州との県境にある山間に抱かれたさまざまな歴史のある町。ローマ劇場跡あり、ろうそく祭りあり、イタリア最古の青銅版あり、サンフランチェスコとの縁もあり……と古代からルネッサンスまでそれぞれの時代に特筆すべき特徴があり、歴史と文化がお好きな方にはじっくり味わっていただけます。さっそく5月に行われる街を上げての大イベントろうそく祭りをはじめグッビオならではの物語をご紹介しましょう。

ろうそくを灯すわけではない?!熱気と興奮に包まれる、フェスタ・デイ・チェーリ

ろうそくを灯すわけではない?!熱気と興奮に包まれる、フェスタ・デイ・チェーリ

グッビオといえばこれ! と言えるほど、この街の人々が大切にしている一大行事、ろうそく祭り(Festa dei ceri フェスタ・デイ・チェーリ)。毎年5月15日に行われ、記録に残っているだけでも1160年から途切れることなく続けられてきており、現在はグッビオの守護神、サン・ウバルドを祭るものとされてはいるものの、キリスト教以前から続く自然崇拝から発祥しているものだと考えられています。紀元前からの風習がキリスト教介入によって変化し、今もなお豊かな特徴を持ちながら残っている貴重なお祭りです。
といっても、現在残っている祭りの形態はろうそくに火を灯すのではなく、ろうそくをかたどった巨大な3本の木造の柱を神輿のようにして街中を男衆が走り抜けた後、広場に集合しアルツァータと呼ばれる柱を持ち上げる様子を観衆が歓喜しながら楽しむというとてもダイナミックなもの。かつては蜜蝋で作られていた巨大なろうそくを抱え、サン・ウバルドの命日の前夜にグッビオの街を練り歩いたのが今の祭りの形の原型になっていると言われています。今やイタリアのみならずや世界中から沢山の人が足を運ぶろうそく祭り。熱気や人ごみも大丈夫! という方にはぜひ一度見ていただきたい一大イベントです。

イタリア最古の儀式文書、イグウィウムの青銅版

イタリア最古の儀式文書、イグウィウムの青銅版

グッビオの旧市街地のシンボルとも言える、グランデ広場に聳え立つコンソリ宮殿(Palazzo dei Consoli)は、1342年に完成した素晴らしいゴシック建築で1909年からグッビオ市立美術館として使われており、数多くの美術品や考古学コレクションが収められています。
その中でも世界に唯一のものと言えるのがこのイグウィウムの青銅版(イグウィウムとはグッビオのラテン語読み)。展示されている合計7枚の青銅版のうち、最も古いものは紀元前300年前の製造であったと言われています。そのうち5枚は両面に、2枚は片面に文書が刻まれており、合計12面にも及ぶ文書が、ウンブリア語とラテン語によって構成されています。これは古代ウンブリア語の表記の仕方がパレオウンブレ(エトルリアのアルファベット)からネオウンブレ(ラテンのアルファベット)へと、時代の移行の中で変化したためと言われています。宗教的な儀式を取り仕切るための決まりごとなどには、時に詩が織り込まれながら刻まれており、イタリア最古の民族といわれるウンブロ族を知るための唯一の手がかりとされているのです。歴史好きの方には見逃せない素晴らしい文化財ですね。

サン・フランチェスコの縁の地としてのグッビオの逸話

サン・フランチェスコの縁の地としてのグッビオの逸話

古代から時は流れ時代は1200年代に。ここグッビオは、アッシジ生まれの聖人サン・フランチェスコが改心したあと1206年の冬に流れ着いた土地でもあります。彼を暖かく迎え、食事と寝どころを与えたのはペルージャでの牢獄時代から信仰を分かち合った友、フェデリコ・スパダルンガ。このスパダルンガの自宅があった場所が現在のサン・フランチェスコ教会の場所であり、この教会は1226年の彼の死後すぐに建て始められたものです。ゴシック様式のシンプルながらも美しい教会内にはサン・フランチェスコがこの地を訪れた時に通った入り口の場所も石碑で記されているのが興味深いところです。
さらにグッビオ周辺で多くの説教を人々にしていたサン・フランチェスコは、グッビオの人々を困らせていた獰猛な狼に説教し改心させたという有名な逸話もあります。鳥と語り、獣を悟していたと言われる聖人ならではのエピソードですね。その狼の棺が遺骨と共に1873年に発見され、現在は、サン・フランチェスコ・デッラ・パーチェ教会に収められています。
このように、グッビオは歴史の流れの中で沢山の物語を持っていたとても興味深い街。旧市街地の石造りの町並みに迷いながら、歴史絵巻を散策できるウンブリアならではの魅力いっぱいのこの街をゆっくり歩いてみませんか。

★グッビオへの行き方
ペルージャ鉄道駅のバスターミナルからE001線で約1時間
各主要都市鉄道駅からグッビオ最寄の鉄道駅Fossato di Vico/Gubbio駅で下車、駅前のバス停からE052 線で36分

ろうそく祭り
開催時期毎年5月15日開催
URLhttps://www.ceri.it/
コンソリ宮殿(Palazzo dei Consoli,現グッビオ市立美術館)
住所Piazza Grande, 06024 Gubbio(PG)
URLhttps://www.palazzodeiconsoli.it/
サン・フランチェスコ教会
住所Largo San Francesco, 06024 Gubbio(PG)
電話075 927 4298
開館時間不規則のため電話にて要確認
URLhttps://www.palazzodeiconsoli.it/

林 由紀子

1999年からイタリア在住、ファエンツア国立陶芸美術学校を経てアーティストBertozzi&Casoniのもとで修行、彼らとの仕事を通してイタリアの食とアートの繋がりを強く認識。移り住んだマルケの土着的な自然、工芸、食文化に関わる人々にインスピレーションを受けてマルケを紹介しようと製作の傍ら通訳アテンド活動を開始。マルケの郷土食などを紹介する文化アソシエーション”Mac Caroni"運営メンバー

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