アルプスの少女から料理研究家へ、ジョヴァンナの素直な人生

アルプスの少女から料理研究家へ、ジョヴァンナの素直な人生

トリノ郊外の町で催された焼き菓子コンクール。ご主人に肩を押されて料理の道を歩き始めた一人の女性が、自分で焼いた4つのトルタを手に会場に向かいました。それがイタリア中のメディアを相手に『イタリア料理』というとてつもなく広い世界の案内役を務めるきっかけになるとは夢にも思わず。でも、幼い頃からアルプスの麓でおばあちゃんの畑仕事を手伝い、パスタをこね、牛の乳を素手で搾っていた彼女は、既にその素地を誰よりしっかり手にしていたのです。

出発点が見えているからグンと飛躍ができた

出発点が見えているからグンと飛躍ができた

ジョヴァンナ・ルオ・ベルケーラ(Giovanna Ruo Berchera)、ピエモンテ生まれ。両親が仕事で忙しかった彼女は幼い頃、アルプスの麓に住む祖父母に預けられて育ちました。料理好きのおばあちゃんと台所で共に過ごすことが多く、彼女も料理の魅力にどんどん惹きつけられていきます。山の暮らしに欠かせないジャガイモからニョッキを、小麦粉でパスタも打ち、おじいちゃんからは牛の乳しぼりも教わります。少しお姉ちゃんに成長してからは保存食作りも学びました。料理学校で本格的に技術や知識を得たのはもっと後になってからですが、『誰の為に、何をどうおいしく作るべきか』、ジョヴァンナは一皿の料理の底に眠る料理の本質を幼いながらにしっかりと手にしていったのでした。
というわけで、焼き菓子コンクールで総合優勝した彼女。会場に居合わせた料理雑誌『Sale & Pepe』のカメラマンの勧めで同誌に履歴書を送ったところ、あっという間にコラボレーションがスタート。その他の料理雑誌『クチーナ・モデルナ(Cucina Moderna)』、『クチーナ・ノー・プロブレム(Cucina No Problem)』、『イン・ターヴォラ(In Tavola)』などからもどんどんオファーが舞い込むようになったといいます。全国紙『コリエレ・デッラ・セーラ(Corriere della Sera)』でも料理コーナーを担当。手際の良さ、何が大事でどこが無駄かが分かるから、限られた時間内でできる料理の完成度が違う。うまい!きれい!しかも、彼女の料理にはどこかほっとさせられるぬくもりがある。
こうしてさらに、国営放送RAIや衛星チャンネルなどの多くの番組でも料理の実演には欠かせないパーソナリティに成長。現在はジャーナリストとしても活躍中です。

蔵書数3500冊と探求心で得た知識

蔵書数3500冊と探求心で得た知識

『イタリア料理』と口にするのは簡単だけど、ひと山越えれば、ひと川跨げば地域自慢の料理も変わってくる。ピエモンテなら肉、キノコ、ポレンタ。シチリアなら魚、トマト、パスタなどなど、地方色が半端ではなく、それが魅力であることはイタリア料理ファンには周知のこと。それでも彼女にこれというレシピをと尋ねればほいっと出てくる。ジュークボックスだってこうはいかない。それもそのはず、彼女の自宅を覗けば、小さなお料理教室が開けるくらい広々とした素敵なキッチンの隣で壁を埋め尽くす本棚が目を引きます。イタリア各州はもちろん、フランス、スペインなどヨーロッパ諸国、果てはスパイスの知識を得んがためインドから東南アジアまでを網羅した料理関連の書籍が3500冊!これは彼女の好奇心と探求心そして知識の豊富さを裏付ける一つの数値に過ぎませんが、おかげでジョヴァンナに一つの料理の材料と分量を手渡せばそれを基に作り方を書き出してくれる。彼女とのこうしたコラボレーションで数々の星付きシェフ達がレシピ本を刊行しています。

自然体が気持ちの良いピエモンテーゼ

自然体が気持ちの良いピエモンテーゼ

「ごめんね、明日から連絡が取りにくくなると思うのよ。」―何が起こった!?―
理由を聞くと、山岳部でレストランを経営する友人のシェフが怪我をしたから自分が代わりに厨房に立つのだといいます。それも1,2日の話ではないらしい。彼女自身の仕事はどうするんだろうと心配になってしまいます。
とにかく彼女と話していて驚くのは自然体で圧迫感がない上に、優しいところ。彼女の料理がいつも大成功を収めているのは、ここに秘密があるんじゃないかと思います。出来上がったニョッキも、ムースでもどことなく彼女自身を思わせるふんわりした丸みをもっている。
今回は、一人のパーソナリティーがテーマと思われたかもしれません。が、厳しくとも豊かなピエモンテの風土は人々に生真面目で実直な性格を育む。ジョバンナの場合、この山の野に咲くレンゲにも似た。そんなお話でした。

写真提供:Giovanna Ruo Berchera
ジョヴァンナ・ルオ・ベルケーラ(Giovanna Ruo Berchera)
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岩崎 幹子

飾らない人たちこそ本当に素晴らしいものや味をその指先から生み出していく。見ているだけでワクワクするし、元気が出る。イタリアならではの人という宝を追い続けて20年。日本の皆さんと一緒に彼らを見つめ、作ったものに触れ、そして味わってもらいたい。そんな思いで楽しく水先案内人を務められたら思います。

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