『ニューヨークタイムズ』が‘世界一美しい’と評した「ニンファの庭園」

『ニューヨークタイムズ』が‘世界一美しい’と評した「ニンファの庭園」

ローマから南に80キロほど下ったところに、かつて『ニューヨークタイムズ』が「世界一美しい」と評した庭園があります。「ニンファの庭園( Il Giardino di Ninfa )」と呼ばれるこの遺跡は、荒れるに任せていた中世の城を英国風の庭園に改造し、現在にいたります。
中世の朽ちかけた城と自然との融合は見事としか言いようがなく、イタリア国内のみならず海外からも見学者が訪れる魅力にあふれる場所です。

高名なローマ法王の実家が元領主!

高名なローマ法王の実家が元領主!

木々や草花がごく自然に配置されているのが好ましい
ニンファの庭園は現在、かつてこの地を治めていたカエターニ家の名を冠した財団が管理をしています。ニンファは、古代ローマ時代には湧き水と神殿が存在しており、その神殿の名が町の由来となってきました。 中世には、数々のローマ貴族たちの領土となっていたニンファは、13世紀後半にカエターニ家の支配下に入りました。このカエターニ家は、ボニファウス8世という高名な法王の実家です。ボニファウス8世は、「聖年(ジュビレオ)」の考案者であり、ローマ大学の設立者でもあります。功罪さまざま、という点ではまさに中世の法王の典型でしたが、後に、世界史の教科書にも登場する「アナーニの屈辱」で失脚します。ちなみに、この舞台となったアナーニも、ローマの南部にある美しい町です。
後世の歴史家たちによってつけられた「中世のポンペイ」の別称

後世の歴史家たちによってつけられた「中世のポンペイ」の別称

妖精が現れそうな幻想的な風景
古代ローマ時代から美しい湧き水で有名であったニンファ、中世にはカエターニ家の指導の下、灌漑施設も整えられたそうです。カエターニ家の領主は、この地に塔を有した要塞を建築、それらが清らかな湧き水に映る様子は当時から有名でした。湧き水は、現在も変わることなくニンファの庭園を彩っています。残念ながらこの広大な要塞は、その後のカエターニ家内のお家騒動のさいに火災にあい、建設から、わずか20年後、1318年には城としての機能を失ってしまいました。その後は再建されることもなく、カエターニ家の城は廃墟となってしまうのです。 城は朽ちても、水は枯れませんでした。 廃墟と湧き水というファンタジックな風景は、後世の人々にも印象深いものがあったようです。「ニンファ」という名前もまた、ちょっとミステリアスだったせいもあるのでしょう。 19世紀のドイツの歴史家フェルディナンド・グレゴロヴィウスは、その様子を「中世のポンペイ」とうたいました。
ニンファの保存のために立ち上がったカエターニ家の子孫

ニンファの保存のために立ち上がったカエターニ家の子孫

庭園内に植えられているアヤメ科のシャガ
20世紀に入り、ニンファを保存する動きが近隣の町とカエターニ家の子孫によって興りました。1920年から、朽ち果てていた要塞も修復が始まり、その子孫の一人、財団の名前にもなったローフレッド・カエターニの奥様であるマーガレットが、18世紀の英国式庭園をモデルにニンファの整備を進めたのです。当時は自然主義がまっさかり、その潮流に乗って「造園の魔術師」と呼ばれたランスロット・ブラウンの庭が、ニンファの庭園のモデルになったのです。1994年にカエターニ家は断絶していますが、財団は残り、今も美しいニンファを守っています。

《 「ニンファの庭園」ガイド付きの見学 》
ニンファの庭園は、ガイド付きの見学でおよそ1時間。
石の壁と湧き水を囲うような美しいてらいのない庭園はため息しか出てこない美しさです。
見学は、春から秋にかけてですが、やはり花が咲き乱れる春から初夏が最も美しいといわれています。

ニンファの周辺にも美しい町とカエターニ家の遺産が

ニンファの周辺にも美しい町とカエターニ家の遺産が

カエターニ財団が管理するセルモネータの要塞
その他、カエターニ財団が管理しているものには、ニンファの庭園から7キロほど離れたところにあるセルモネータの城があります。 こちらも、中世のたたずまいを残した美しいお城で、城壁内をトンネルのように通過できたり、豪奢なサロンを見学できたりと見どころ満載。ニンファとは違う、ミステリアスな雰囲気を味わえます。 イタリアも日本と同様、地震から逃れることができませんが、今回ご紹介したような石造の建物は数世紀を経て残っていることもまれではありません。自然に朽ちていくその建物は、完全な姿ではなくとも不思議な情緒があります。そういった遺跡を美しく保存するという技術が、イタリアには存在することがこうした場所を訪れていると実感できるのです。 ローマ市内とはまったく趣の異なる周辺のこうした小さな町々でぜひ実感してみてください。
セルモネータ、カエターニ要塞の一部
ニンファの庭園( Il Giardino di Ninfa)
住所Via Provinciale Ninfina 68 04012 Cisterna di Latina
営業時間4月~6月 9:00-12:00, 14:30-18:00/7月~9月 9:00-12:00, 15:00-18:30/10月~11月 9:00-12:00, 14:00-16:00
※約10分おきのガイド付きツアーとなります。開園日や開園時間は公式サイトでチェックしてください。
電話+39 0773632231
HPhttps://www.giardinodininfa.eu/giardino-di-ninfa/
 ※予約必須&ガイド付きツアーのみ
セルモネータのカエターニ要塞(Castello Caetani di Sermoneta)
住所Via della Fortezza 04013 Sermoneta(LT)
営業時間4月~9月 9:30 / 11:00 / 15:00 / 16:30
10月~12月 10.00 / 11.30 / 14.00 / 15.00
※こちらも完全ガイド付きツアーになります。(1日4回実施、見学時間はおよそ45分)
電話+39 077330008
HPhttps://www.giardinodininfa.eu/castello-caetani-di-sermoneta/

井澤 佐知子

イタリア生活十数年、ローマ近郊の田舎での生活ほぼ7年。 坂道を上るトレッキングシューズとリュックサックが必須の毎日。ローマの南、風光明媚なカステッリ・ロマーニを拠点に、家族とともに風のようにイタリアのあちこちを物見遊山中。 趣味は書籍の大散財。イタリアの美術、食文化、歴史をこよなく愛する。

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