パレルモの名物ストリートフード Vol.5|下町の心「フリットラ」

パレルモの名物ストリートフード Vol.5|下町の心「フリットラ」

イタリアでも随一のグルメな島シチリアの州都パレルモ。長い歴史の中で育まれた独特の食文化が魅力です。この街では、海と大地の恵みはもちろん、「死ぬまでに食べたいストリートフードの街」で欧州第1位にノミネートされたご当地グルメも食べてみたい。カオスなパレルモの真髄に触れるストリートフードを現地からお届けするシリーズ第5弾は、知る人ぞ知る“フリットラ”!

パレルモっ子にも知らない人がいる?!

パレルモっ子にも知らない人がいる?!

布が被せられた大きなカゴが置かれた屋台。注文すると、店のお兄さん(やおじさん)がうやうやしく布をまくって、カゴの中にズボッと手を突っ込む。布の下から出てきた手には、アッツアツの小間肉(のようなもの)。

鷲掴みに取り出したそれが、“フリットラ“。パレルモ名物ストリートフードの中でも知る人ぞ知るディープな一品で、パレルモっ子の中にも「知ってはいるけど食べたことない」人もいれば、「知らない」なんていう不届きものも(もしくは育ちが良いとも言う)います。

一体なんの肉なのか? あのカゴはどうしていつまで熱いのか?色々と謎に包まれたフリットラ屋台。観光客でも行きやすいエリアでは、バッラロー市場とカーポ市場で見つかります。

謎に包まれたレシピと保温カゴ

謎に包まれたレシピと保温カゴ

フリットラは、パレルモ旧市街のサント・オノフリオ広場にあった食肉工場で、仔牛の骨も軟骨も内臓も一緒に高温処理した後の残物をラードで揚げ、月桂樹と黒胡椒、サフランで味付けして道端で売られたのが始まり。誕生したのは15世紀の中頃で、パレルモでは、比較的新しいストリートフードと言われています。

今も仔牛のあらゆる部位(脂身や肉片、スジなど)を内臓と骨を一緒に高温で長時間煮た後、高圧で水分を除去し、ラードとハーブで仕上げますが、味付けはフリットラーウ(フリットラ屋)によって異なり、公表もされていません。調理後のフリットラを保存する屋台に置かれた保温カゴのシステムも、秘密。

売り切れ御免で店終いするまで、見事に熱々を保つ謎のカゴに腕を突っ込み、“素手”で掴み出す様子は、天ぷら屋さんが手で温度を測るかの如く。いつか失われてしまうパレルモの下町職人芸のひとつかもしれません(ぜひ受け継がれていくことを願います)。

食べて体感する庶民スピリッツ

食べて体感する庶民スピリッツ

熱々のフリットラは、パレルモのゴマ付きパンに挟むかそのままで、黒胡椒とレモンをたっぷりかけていただきます。スパイシー&こってり風味のフリットラは、飲んだ後の〆に良さそうな味。バッラロー市場では、(〆ではなく)朝からおっちゃん達がビールを飲みつつ楽しんでいます。

お肉の良い部分は王侯貴族に、残りは下層階級に。歴史的に封建的な社会階層が存在したイタリアの町々では、庶民の熱意と知恵と工夫によって生まれた料理が、いつの間にか市民権を得て、名物郷土料理としてレストランのメニューに並んでいたりするものですが、フリットラはまだ“庶民ソサエティ”に留まっているのが面白いところ。

誕生当時のままに力強い庶民スピリッツが宿る “フリットラ”を猥雑な市場で、たくましく生きるパレルモのおっちゃんたちと共に食べてみれば、なんだかパレルモの歴史をガッツリ体感するよう。でも胃腸が弱い人は、胃もたれ必須。ハーフサイズ(※)にしておくのが無難です。
※誰かと半分に分けるか残すかの意味。ハーフサイズでオーダーなんてシャレたことはできません(笑)。

岩田デノーラ砂和子

慶應義塾大学卒業。(株)リクルート退社後2001年よりイタリア在住。ローマを経て、2010年からシチリア州都パレルモ在。女性誌・旅行誌のイタリア特集企画編集及びTV・WEB等日本メディアのコーディネートほか、イタリア関連書籍多数。イタリアのプロで作るチームLa Vacanza Italiana主催、国際ジャーナリスト協会会員・イタリア商工会議所認定通訳。

シチリアの関連コラム

関連する旅プラン