大自然の中で山の魔女さんロレッタのハーブレッスン

大自然の中で山の魔女さんロレッタのハーブレッスン

大自然に包まれた山の中にひっそり生活する魔女さん、自然のサイクルとともに収穫した 山の薬草を自由自在に操り、不思議なお薬を作ったり、スパイスを作ったり・・・・・・そんな 様子を絵本の中で見て、どこに行けばこんな人がいるのだろう?と思ったことはありませ んか。 いわゆるイタリアでいう魔女さん、ストレーガは、かつて歴史の中では中世の時代に教会から忌まわしい存在として火あぶりにされてしまった女性たちですが、ほうきに乗って飛 ぶ”ベファーナ”と呼ばれるエピファニーに登場する人物と混ざりあい、現在ではほうきに乗って魔法を使う女性が魔女、というイメージが多くの国では定着しているようです。 でも、イタリアでいう魔女さんはやはりまだまだ”薬草を自由自在に操る”とされている伝統的な存在。その知識の多さから、ハーブや野草に詳しい女性のことを親しみを込めて”魔女さん”と呼ぶこともしばしば。 そして、イタリアのある地域の山奥では、実はまだ本当にそんな生活を送っている魔女さんがいるのです。

野山の野草やハーブを熟知する魔女、ロレッタさん

野山の野草やハーブを熟知する魔女、ロレッタさん

場所はマルケ州北部、ネローネ山の中腹の深い森のなかにある小さな集落、カルデッラ。 ここに、数十年前から手付かずの自然を探して移り住んだのが、ロレッタ・ステラ (Loretta Stella)さん。長年薬草ベースの商品を開発する製薬会社に勤めながら、薬草や野草を学び、多くのワークショップを開催してきた彼女は、イタリアの薬草学や歴史に精通したこの地域の”野草の魔女さん”。本当に数件しか家のない山奥のこの村に生活するのは、現在はほぼロレッタさんのみだそう。五感を研ぎ澄ましてくれる大自然に囲まれた環境を学びの場として、色々な人たちが彼女のもとを訪れます。
山のハーブをお料理に活かしたいレストランのシェフ、ハーブティーを学びたい人、ハーブチンキ(*)の作り方を学びたい人・・・・・・それぞれの訪問者の希望にあわせてさまざまなリクエストに答える彼女。決して愛想がいいわけではなく、皮肉たっぷりのコメントなどが飛び出るときもありますが、時々見せてくれる鋭くもあたたかな眼差しに”また会いたい!”と思ってしまう、不思議な魅力に溢れた方なのです。 ひっそりと暮らす彼女の暮らしの魅力を伝えようと、国営放送がドキュメンタリーを制作したり、短編映画が作られたりと、ロレッタさんの生き方そのものがメッセージ性を帯びたものであることが伺えます。

(*)ハーブチンキとは:ティンクチャーとも呼ばれ、薬草やハーブなどをエタノール+精製水に一定期間漬け込み有効成分を抽出したもので、ハーブの成分が凝縮されている液体。イタリアでは水で薄めたものを定期的に摂取して体調の回復をはかるなど、民間療法として広く愛されている製剤です。

生活に密着したハーブ使いは、ロレッタさんならでは

生活に密着したハーブ使いは、ロレッタさんならでは

ロレッタさんの暮らしを覗くと、すべてのサイクルが山のハーブとともに成り立っていることが分かります。家の中には、乾燥ハーブやチンキ類などが並んでおり、彼女の特製ブレンドのハーブティーがずらり。ハーブのリキュール、料理用のハーブミックスはどれも彼女が山から採集してきた季節のハーブを加工したもの。所狭しと置かれたそれらをじっと見つめていると、質素な住まいの中にも物凄い豊かさが息付いていることが分かります。 石造りの古い家には最低限の家具や調理道具が置かれ、2階は大きなハーブ用の乾燥部屋。この家に入るだけで、不思議と懐かしい気持ちになり、家の中のハーブたちが語りかけてくるような気さえする・・・・・・そんな異空間の空気が訪れる人を包むのです。

ロレッタさんのワークショップの魅力

ロレッタさんのワークショップの魅力

さて、最後にロレッタさんが開いているワークショップをご紹介しましょう。彼女のワークショップの最大の魅力は、自然の中のハーブや薬草を、野山を歩きながら一緒に観察できること。ロレッタさんは天然に育つ植物のエネルギーこそが、一番薬効が高いと自らの体験からも実感しているため、「現代のハーブ関連製品は、その多くが栽培されているものであり、山で出会う1つ1つの植物とは生命力も変わってくる。是非野生の中で育つ植物を観察しながら、その波長やエネルギーを感じてほしいわ。」と植物たちの育つ環境、歴史の中でどのように使われてきたかなど様々なテーマを織り交ぜながら話をしてくれます。1日のワークショップの中では時間に制限があるため沢山のことは学べませんが、その季節季節の自然を観察しながら旬の植物と山で出会い、植物採集したあとは座学で説明や意見交換と、とても充実した内容。イタリアならではの植物に纏わる神話や伝説も織り交ぜられた充実した内容です。彼女のワークショップを通して、 生き方に対するポリシーや自然に対するリスペクトがあるからこそ、 深い知識が意味を持ち、日々の生活に活かされるのだと感じました。そんな魔女さんの豊かな山の暮らしに触れ、彼女の特製ハーブティーをいただきながら過ごす時間は、きっと現代の消費生活に疑問を持っているすべての方にとって、小さな魔法の時間となるはずです。

■ロレッタさんを追ったドキュメンタリー・エルバステッラ(ERBASTELLA)

林 由紀子

1999年からイタリア在住、ファエンツア国立陶芸美術学校を経てアーティストBertozzi&Casoniのもとで修行、彼らとの仕事を通してイタリアの食とアートの繋がりを強く認識。移り住んだマルケの土着的な自然、工芸、食文化に関わる人々にインスピレーションを受けてマルケを紹介しようと製作の傍ら通訳アテンド活動を開始。マルケの郷土食などを紹介する文化アソシエーション”Mac Caroni"運営メンバー

マルケの関連コラム

関連する旅プラン