音楽に革命を与えた天才ヴァイオリニストの「大砲」と呼ばれたヴァイオリンを見に行こう!

音楽に革命を与えた天才ヴァイオリニストの「大砲」と呼ばれたヴァイオリンを見に行こう!

ロマン派時代に数々の伝説を残し、多くの芸術家に影響を与えたスーパースター、ニコロ・パガニーニ 。それまでの音楽に革命を与え「悪魔と契約した」とまで言われた鬼才のヴァイオリニストであり作曲家だ。家財道具を全て質に入れてでも聴きに行け! とまで言われた演奏会では、人間の限界を超える驚異の超絶技巧に当時の人々は狂乱した。単に演奏が優れていただけではなく、ミステリアスな容姿や過激なステージパフォーマンス、ゴシップを逆手にとって世間の注目を浴びるなどの自己プロデュース能力とお金を稼ぐマネジメント力も持ち合わせていた。そんな彼の素顔に迫ってみよう。

まるで現代のロックスター?! スーパースターのクレイジーな生き様!

まるで現代のロックスター?! スーパースターのクレイジーな生き様!

ニコロ・パガニーニは1782年にジェノヴァの港近くの家に生まれる。体の弱いニコロは港で働く厳しい父にマンドリンとヴァイオリン、そしてジェノヴァ商人の商人気質を教わった。5歳の時、母はこんな夢を見る。燃え上がる劇場で演奏する息子のそばで指揮者と悪魔が彼の魂を争っている。そこに現れた天使に、息子は後世に名を残す偉大な音楽家になるかと尋ねると、天使は肯定する身振りをした。パガニーニは母の見たこの夢を一生信じ、見事に証明してみせた。ハイネ、ゲーテといった偉人たちが大絶賛し、ヨーロッパ中で一躍有名人となる。さらにリスト、シューマン、シューベルトなどの作曲家勢も彼の音楽に影響を受けたといわれている。

また当時、彼が悪魔と契約をしたという話は広く信じられ、パガニーニもこの話を上手く利用して世間の注目を浴びていた。高身長で黒いマントに長い黒髪……そのミステリアスな姿や、観客をわざと延々と待たせたり、ステージ上でハプニングを起こすなど、いつも世間を騒がせていた。演奏中にどんどん弦が切れ、最後の一本で演奏会を弾き人々を驚かせた事は有名な話だが、実は伸ばした爪でわざと切っていたのでは?とも言われる。一方私生活ではスキャンダルやトラブルも多く世間から非難を受けて苦しんだ時期もあった。
それでも、9歳の時に彼が初めてソリストとしてデビューした聖フィリッポ・ネーリ教会とオラトリオはバロック様式で大変美しく、ぜひ訪れたい。投獄されたグリマルディーナ塔も入館可能だ。

パガニーニ国際ヴァイオリンコンクールと貴重なパガニーニ本人のヴァイオリン

パガニーニ国際ヴァイオリンコンクールと貴重なパガニーニ本人のヴァイオリン

元々体が弱かったパガニーニは多忙な生活や長期に渡る演奏旅行の影響もあり、いつも病に苦しみ薬漬けの生活を送ったという。遺言にて、自分のヴァイオリンをジェノヴァ市に寄付する代わり、永遠にトゥルシ館に保管するよう頼んだ。現在この場所へ、世界中から音楽ファンが彼のヴァイオリンを見に訪れる。数多くの伝説と新しい奏法を生み出したヴァイオリン『カノン』(イタリア語ではCannone「大砲」を意味する)は、クレモナのヴァイオリン製作者グァルネリ(ストラディバリウスと同時代の人物)によって生み出された銘器だ。『カノン』を修理に出す際に、複製として作らせた『ヴィヨーム』(職人の名前)は後に唯一の弟子シヴォリに譲られた。この貴重な2台のヴァイオリンの他にも、楽譜や手紙、譜面台、ヴァイオリンケース、そして数々の勲章なども展示されている。
若手の登竜門としてしられるパガニーニ国際ヴァイオリンコンクールの優勝者に『カノン』を演奏する資格が与えられるため、世界中から優秀な演奏者が集り、観客はその演奏を間近に見ることができるためいつも満席だ。

天才が友人たちと楽しんだ幻の演奏曲とギター演奏

天才が友人たちと楽しんだ幻の演奏曲とギター演奏

パガニーニと言えばヴァイオリン。しかし、彼がギターの名手で愛好家だったことはほとんど知られていない。天才ヴァイオリニストは19歳の頃ギターに出会い、たちまち魅力される。少しの練習であっという間に誰よりも上手くなり、ギターの独奏曲やギターとヴァイオリンの二重奏を数多く作曲するが、それらは聴衆の前で披露される事はなかった。彼がヴァイオリン演奏に飽きて気分を変えたい時に、ギターを手に持ち、友人を呼んでヴァイオリンを弾かせてはセッションして楽しんでいたそうだ。超絶技巧を披露する多くのヴァイオリン曲とは異なる曲想で、プライベートでの彼の一面が伺える。パガニーニの愛用した美しい装飾が特徴のギターは1826年ごろにナポリの職人、ジェンナーロ・ファブリカトーレによって製作されたもの。3台とも貴重なギターコレクションとしてトゥルシ館に展示されているので、こちらも見逃せない。

なんと料理の才能まで!! 悪魔のレシピ? 牛の脳みそを使った創作料理とは一体!?

なんと料理の才能まで!! 悪魔のレシピ? 牛の脳みそを使った創作料理とは一体!?

パガニーニにちなんだお土産やグッズをお探しの方は、ぜひブックショップへ。大きな楽譜がすっぽり入るトートバックは人気商品だ。また、毎年10月(パガニーニの誕生月)にパガニーニ・フェスティヴァルが行われ、約ひと月もの間、街中が盛り上がる。このフェスティヴァル期間中、コンサートはもちろん、飲食店やお菓子屋さんなどでパガニーニからインスピレーションを受けて創作された品々が販売されるので見逃せない! ジェラート、焼菓子、ワインにアペリティーヴォなど、この期間限定のユニークなものにも出会える。特に注目したいのは「ラヴィオリ・ディ・パガニーニ」。なんとパガニーニ本人が考案した創作料理! フェスティヴァル期間中のみ、バンキ広場にあるオステリア・デ・バンキ(Osteria de’ Banchi)で彼の手書きレシピを再現した料理を味わうことが出来る。なんと牛の脳みそを使用した濃厚なラヴィオリだ。ぜひご賞味あれ!
トゥルシ館(Palazzo Tursi)
住所Via Garibaldi 9,16124 Genova
営業時間夏期 火から金9時~19時、土日10時~19時半
冬季 火から金9時~18時半、土日9時半~18時半
休館日月曜、クリスマス、警報が発令されている日
電話+39 0105572193
HPhttp://www.museidigenova.it/
聖フィリッポ・ネーリ教会(Chiesa di San Filippo Neri)
住所Via Lomellini,12,16124 Genova
営業時間不定期

大西 奈々

2011年よりジェノヴァ在住。日本で芸術大学修士課程修了後渡伊、音楽院を卒業。演奏会でリグーリア州各地を周り、小さな街の独特の文化や景色に魅せられる。趣味は休日に骨董市をまわったりジェノヴァ近郊の街を探検する事。バリエーション豊かな伝統工芸品やリグーリア産の食材の産地、料理の情報をお届けいたします。

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