イギリス人が作ったシチリア伝統 マルサラワイン

イギリス人が作ったシチリア伝統 マルサラワイン

イタリア好きの方なら一度は聞いたことがあるであろう「マルサラ」という地名。この地名を有名にしたのは間違いなくマルサラワインの存在でしょう。その証拠に、今でもマルサラの街には数多くのマルサラワインのワイナリーがあります。でも、聞いたことはあるけど、詳しいことは知らない、しかもマルサラってどこだっけ?とそんな方が多いのも事実。そこで今回は、マルサラワインがどうやって生まれたか、マルサラワイン生誕の秘密にせまります!

マルサラワインは偶然の産物だった!

マルサラワインは偶然の産物だった!

1700年代後半のこと、イギリス人の商人ジョン・ウッドハウス(写真左)はイギリスで販売するための商材を求めて、船でシチリア西南部を目指して南下してきました。ある日のこと、目的地を目指してマルサラ沖を航海していると、強いアフリカからの南風シロッコが吹いてきて。先に進むことが難しいと判断したジョンは予定を変更してマルサラの港に停泊することに決めました。マルサラの人々はジョン達を歓待して、大切な時にふるまうという地ワインを振舞いました。それを飲んだジョンは、「これはおいしい! イギリスで売れる!」とピンっ! とひらめき。当時のイギリスではシェリー酒やマデラ酒が大流行中でしたが、マルサラ地方の地ワインはそれらに似た味わい。予定していた商材をイギリスに持って帰ることを辞めて、船には大量の地酒を積んで帰ることにしました。当時、イギリスまでは船で3カ月。地ワインは元々、自然の酵母の力で15℃くらいのアルコール度数がありましたが、腐らないようにアルコールを加えてイギリスに持って帰った(つまり酒精強化)……これがマルサラワインの始まりだったのです。

マルサラの地酒はどんなお酒?

マルサラの地酒はどんなお酒?

さて、マルサラの人々がジョン達にふるまった地酒はどんなものだったのでしょう?マルサラで作られる地酒は、今の白い透明感のあるワインではなく、琥珀色に輝くアルコール度数の高いお酒でした。昔はワインと言えば赤ワインが大半を占めていました。それは赤ワインの方がポリフェノールやタンニンを多く含み、保存性が良かったから。しかし、マルサラをはじめ、シチリア西海岸は白ブドウの栽培が適した地質。そして太陽光が強いのも西シチリアの特徴。ここで栽培される白ブドウは糖度、酸度がとても高く、アルコール度数も自然発酵で15度を超します。通常、白ワインは温度管理をしておかないと腐敗していってしまうのですが、西シチリアの地ワインが温度管理しなくても大丈夫だったのはこの高いアルコール度数のおかげ。逆に言えば、この地ワインはこの土地だからこそできたものだったのです。

イギリスで爆発的人気を誇ったマルサラワイン

イギリスで爆発的人気を誇ったマルサラワイン

さて、シチリアから、マルサラの地酒にアルコールを加えたもの(つまりマルサラワイン)は、イギリスへ向かう船の航海中、樽の中で地酒とアルコールがいい具合で混ざりあっておいしいお酒となり、イギリスで販売してみたところ爆発的に売れ。これはいける! と思ったジョンは、再び地ワインを買い付けにマルサラに何度もやってきました。そしてついには自分たちでブドウ畑を作り、ワイナリーを作り、マルサラにベースを作り始めたのです。そして、そんなジョンの成功を見て、インガム(上章 写真右)、ホップス、等、次々とイギリス人がマルサラに上陸して、ワイナリーを作り始めたのが1800年代前半。こうして元々、商人だったジョンが目を付けたマルサラの地酒は、イギリスで大流行することになり、「マルサラ」という地名は思わぬ形でイギリスにとどろくこととなったのです。ウッドハウス、インガム、ホップスなど、イギリス人達が作ったワイナリーは、当時有力だったイタリア人が作った他のワイナリーに買い取られてしまい、イギリス人としての造り手は現在はいません。けれども、マルサラワインのワイナリーを訪れると、イギリス人の名前が書いてある樽が今でも存在していて、その歴史を物語っています。 たかがマルサラワイン、されどマルサラワイン。マルサラワインにまつわるストーリーはまだまだあって……その続きはまたの機会に。

さて、色々なストーリ―が語り継がれるマルサラワインですが、マルサラの人たちがイギリス人にふるまったワイン、それはペルペトゥオと呼ばれる白ブドウで造った西シチリア伝統の地ワインでした。いまではほとんど味わうことができないこのワインを集めたミニ博物館をHISのツアーでご案内しています。

佐藤 礼子

2005年よりイタリアの南の島、シチリア島在住。力強い大地の恵みと美しい大自然に魅せられ、シチリアに残ることを心に決める。シチリア食文化を研究しつつ、シチリア美食の旅をコーディネートする「ラ ターボラ シチリアーナ」を主宰、トラーパニで活動中。年に数回日本でも料理教室を開催。趣味は畑とオリーブオイル造り。

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