ナヴェッリのDOPサフランを求めて

ナヴェッリのDOPサフランを求めて

ローマからラクイラ経由のバスで、約2時間半〜3時間半。ラクイラ県のナヴェッリ(Navelli)は、「イタリアの最も美しい村」と呼ばれる村のひとつです。人口500人ほどの小さな村で、高い山々に挟まれた高原地と山の尾根に沿って広がる旧市街からなる標高約750mの場所にあります。この地域は古くからサフランの産地として栄え、2005年には地元の生産者組合が中心となり「Zafferano dell’Aquila」の名称でDOP(※)認証を取得。国内有数のサフラン生産地として、高い品質を誇っています。
※DOP(Denominazione di Origine Protetta):イタリアにおける原産地名称保護制度

ミラノ風リゾットの起源も?! サフランの歴史と伝説

ミラノ風リゾットの起源も?! サフランの歴史と伝説

最初にサフランがこの地に伝えられたのは、13世紀頃。スペインから戻ってきたナヴェッリ出身の修道士が、薬として持ち帰ったと言われています。今でもナヴェッリの人たちは体調を整えるために湯に溶かして飲んだり、塗り薬や湿布に使ったりと、万能薬として重宝しています。
また、サフランにまつわる言い伝えにも興味深いものがあります。特にミラノ風リゾットについては、ミラノでドゥオーモの建設工事が行われていた頃、ナヴェッリから出稼ぎに来ていた青年が薬代わりに持参していたサフランを用いて仲間たちに振る舞ったのがはじまりだという説や、ドゥオーモのステンドグラスの顔料として使われていたサフランを白米に入れて食べたのがはじまりだという説など、諸説あるようです。

地道で繊細な手作業が続くサフラン作り

地道で繊細な手作業が続くサフラン作り

クロッカスの一種であるサフランは、可憐な薄紫色の花を咲かせる10月下旬から11月初旬が収穫シーズン。花が開いてしまわないよう、早朝の日が昇る前に畑へ出て、一つずつ手で摘み取ります。摘んだ花は家族や近所の人たちが囲むテーブルに広げられ、雌しべ、雄しべ、花びらに分ける作業へと続きます。一般にサフランと呼ばれ香辛料や薬として使われるのは、赤い雌しべの部分だけ。黄色い雄しべは染料に、花びらはジャムなどに活用されます。集められた雌しべは、「Staccio」と呼ばれる目の細かいザルの様な容器に並べ、オークやアーモンドといった匂いや煙の少ない木の炭を用いて乾燥させます。1kg分のサフランを作るのには、約20万個の花が必要だと言うのですから、高価になるのもうなずけます。

地元の人々の暮らしに根付く、サフランを使った郷土料理

地元の人々の暮らしに根付く、サフランを使った郷土料理

ナヴェッリの人々にとってもサフランは高級品。遠くに住む友人や家族が集まったときは、サフラン料理でもてなします。今回ご紹介するのは、同じくナヴェッリの特産品でスローフード協会の認定も受けている、ヒヨコ豆とサフランのパスタ。この地域のヒヨコ豆は、通常よりも小粒で実が詰まって味が濃いのが特徴です。パスタは「サニェッティ」と呼ばれる細い短冊状の自家製パスタを使います。ニンニク、ローズマリー、サフランで香りを付けたヒヨコ豆にパスタを加え、全体がサフランの美しい黄金色に染まると完成です。ヒヨコ豆は豊かさの象徴でもあるので、見た目にも贅沢な一皿。スプーンですくって頬張ると、弾力あるパスタを介してサフランとヒヨコ豆の風味が鼻腔に広がります。

※資料・取材協力:Cooperativa ALTOPIANO DI NAVELLI, B&B Abruzzo Segreto

保坂 優子

都市計画コンサルタント。アブルッツォ州での留学経験を経て、2002年から大阪とアブルッツォを行き来する生活を続けている。2009年のラクイラ地震を機に州の紹介サイトを立ち上げる。2016年4月からフリーペーパー「アブルッツォ通信」共同発行者。アブルッツォに関する講演やイベントの企画、コラムの寄稿などにも携わる。

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