シチリアオリーヴオイル物語

シチリアオリーヴオイル物語

それは今から随分昔のシチリアでの話。少年と2匹の犬がいました。少年は、子どもの頃からお父さんに連れられて山のオリーヴを育て、秋の収穫を楽しみにしていました。三日三晩寝ずに収穫したオリーヴは、秋になり、黄金に輝くおいしいオリーヴオイルになったのです。朝小さじ一杯のオイルは万能な薬と言われるほどで、犬たちも長生きをしました。オリーヴオイルは、一年中彼らの食卓を豊かにしてくれたのです。そして、その少年は約半世紀経った今も、オリーヴを毎年収穫しているのでした。

ブッケリーのオイルは世界一!

ブッケリーのオイルは世界一!

シラクーサ県内で有名なオリーヴの産地Buccheri(ブッケリー)へは、シラクーサ市内から車で約一時間。イブレア山脈に位置する人口2,000人のこの町は、数多くの世界の賞を獲得する、知る人ぞ知るオリーヴオイルの産地。銘柄であるMonti Iblei DOP(モンティ・イブレイ・ディー・オー・ピー)の産地の一つであり、主に、古代ギリシャから伝わった古来種と言われる、Tonda Iblea(トンダ・イブレア)を育てています。
この種は、香りはリンゴやトマトなどの青みがあり、味わいはフルーティーで辛味と苦味のバランスの良い、一度食べたらやみつきになるオリーヴオイルです。オリーヴは春に白い花を咲かせ、その後実がなります。その実を、秋に皆で収穫し、搾油。この単純なサイクル、文化、自然の恵が実に素晴らしいのです。

収穫が始まりますよー!

収穫が始まりますよー!

まさかシチリアオリーヴ物語の少年のその後の収穫に、自分も参加するとは。と言うより、家族は強制参加なのです。手作業の収穫にはまず人手が必要です。早く摘まなければ熟れ過ぎたり、落ちてしまったりするので、時間との勝負です。プロは一日数百kgの量を摘むところ、私については毎年「これだけかー!」と笑われます。先が長いので、気楽におしゃべりメインで摘んでいます。
木の下に網を広げ、熊手付きのオリーヴ取り棒で、ガサガサと実を落としていきます。採れたオリーヴを集めて、かごに入れて、次の木へ。網から転げ落ちた実をおいしそうに食べている犬を真似して一粒食べたら、さぁ!大変。とっても苦い。こんな苦い実が、あんなにおいしいオイルになるとは驚きます。
ギリシャ人はいつ、この実を搾ろうと思ったのか、このオイルができたことでどれだけ生活が変わったか。時空を越えたロマンを感じながら早朝から始まる収穫作業をし、ピクニック風ランチで休憩。さらに午後に数時間作業をして、戦利品のごとく、オリーヴを搾油所に運びます。 搾油所では合計の重さを図り、自分の順番待ちをしながら、一年ぶりの顔見知りと、情報交換と言う名の井戸端会議が長々と続きます。

しぼりたてのオリーヴオイルで乾杯!

しぼりたてのオリーヴオイルで乾杯!

一通りのおしゃべりが終わった頃に、順番がやってきます。ここ数年の搾油機械はハイテクで、全て機械化されています。ただこの機械を動かす人によって、オイルの質が変わるのです。ベルトコンベアで運ばれるオリーヴの実は、既に我が子のよう。オリーヴを追う我々の目は真剣です。葉や枝と実が選別され、水で洗われ、粉砕され、温度管理下で練り込まれます。遠心分離の末にオリーヴオイルとして搾り出されてくると、感動。我ながら、拍手喝采。一日の肉体労働の苦労が報われる瞬間です。毎年恒例の正真正銘の初もの1番絞りNovello(ノベッロ)にて乾杯! 最高のご馳走ですが、ポリフェノールでむせるのもお約束です。最後にオリーヴの総量とオイル量の比重を計算し、今年のできを評価し合います。 知れば知るほど、奥が深いオリーヴオイル。今年も新しい物語ができることでしょう。めでたし。めでたし。

アジィエンダ アグリコーラ・ラ・シチリア(Az.Agricola LA SICILIA)
住所 CORSO GELONE 103,(SR)
TEL334 372 2235
営業時間10:00〜17:00
休日不定休

秋草 奈緒子

シチリア州東部 シラクーサ在住。 旧市街オルティージャ島にて、シチリア料理と和食のレストランla cambusa (カンブーザ)を経営。 笑いの絶えないシチリアでの生活。旅行。食事。 シチリアのシンボル、3本足のトリナクニアがあなたを待っています! (写真:パプリカと私 in シチリア)

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