シチリア西海岸に広がる、完全天日干しで作る天然海塩の塩田

シチリア西海岸に広がる、完全天日干しで作る天然海塩の塩田

シチリアの最西端の町・トラーパニから南に50kmのところにあるマルサラまで、シチリア西海岸には、完全天日干しの天然海塩を作る塩田が広がっています。ぽこっ、ぽこっ、と並ぶおにぎりのような大きな白い山……それが塩の山。ここシチリア西海岸では、日本でも多くのシェフが愛用する、天然海塩が作られているのです。

古代フェニキュア人から続く塩づくり

古代フェニキュア人から続く塩づくり

塩の歴史は古く、古代地中海の民・フェニキア人から伝わったと言われています。シチリアは地中海のど真ん中に位置するという立地条件から、多くの民族からの侵略や支配を受けてきました。フェニキア人は現在のチュニジアあたりに居住し、高い文明を持っていたことで知られています。
2千年以上前、トラーパニ近辺を支配していたフェニキア人は、トラーパニからマルサラにかけての一帯が、「風・気温・湿度」という塩作りには欠かせない三大要素が揃っている事に気がつきました。その上、地中海はマグネシウムやヨードなどの天然成分が豊富に含まれているという事実に目を付けました。そして、条件が揃った理想の地での塩作りを始めたのです。塩作りが始められたのは紀元前の話ですので、そこからもフェニキア人の高水準の文明が伺えます。

かつて、塩は貴重な調味料だった

かつて、塩は貴重な調味料だった

「サラリー」の語源は「塩=Sale(サーレ)」から由来することはご存じでしょうか? 古代の兵士への給料は、当時栄養源として希少価値であった塩で払われていたそうです。そのことから、給料のことを「サラリー」と呼ぶようになったのです。
以前、塩田で働く方からロシアで使われていた「塩入れ」の展示会に誘われて見にいったことがありました。正直、お誘いを受けたときには「塩入れの展示会」という意図がよく分からなかったのですが、展示会場に行ってみたら納得。エメラルド、ルビー、ダイヤなど、高価な宝石で覆われた20~30cmの高さの凝った形の陶器が、一つひとつガラスのショーケースに入れられて並んでいたのです! それはそれは美しく、ようやく「塩入れ」が貴重なものであることが理解できました。そしてそれは、それほど塩が大切だったという証なのでした。塩入れの宝石も美しいですが、塩田でできる塩もまた美しいものです。手ですくってみると、塩のクリスタルがキラキラと輝きます。

自然豊かな自然保護区に広がる、のどかな塩田

自然豊かな自然保護区に広がる、のどかな塩田

塩田のほとんどはパンダマークでおなじみのWWFの自然保護地区とされています。塩が強い土地でも育つ珍しい植物や、豊かな自然の中にやってくるさまざまな種類の鳥を観測することができるため、トレッキングやバードウォッチングも愛好者によって多く企画されています。そして季節になると、渡り鳥のフラミンゴも見かけることができるのです。
春には野の花が咲き、塩田の風景は何千年も前からこんな風景だったのか、と妄想させ、そしてどこかホッとするとっても美しい風景が辺り一帯に広がります。ですが、残念ながら塩田までは電車やバスなど、公共の交通機関で行く手段はほぼ皆無と言っても過言ではありません。だからこそ、こののどかな風景も今まで守られているのかもしれません。何よりもうれしいのは、自然のままの状態に保たれていることでおいしい塩ができるということ! ここで塩づくりを始めたフェニキュア人と、現在もおいしい塩を作り続けてくれている職人さんに感謝。シチリアに来たら、必ず訪れていただきたいオススメの場所の一つです。次回ではこの塩がどうやってできるのか、おいしい塩の秘密を大公開。どうぞお楽しみに!

佐藤 礼子

2005年よりイタリアの南の島、シチリア島在住。力強い大地の恵みと美しい大自然に魅せられ、シチリアに残ることを心に決める。シチリア食文化を研究しつつ、シチリア美食の旅をコーディネートする「ラ ターボラ シチリアーナ」を主宰、トラーパニで活動中。年に数回日本でも料理教室を開催。趣味は畑とオリーブオイル造り。

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