アドリア海の絶景を堪能する

アドリア海の絶景を堪能する

イタリアの地中海側と言えばナポリやアマルフィ、チンクエテッレなど風光明媚な人気の海辺の町が名を連ね、アドリア海はどうしてもその影にひそみがちです。ところがこのアドリア海側でしか見られない特別な風景が「海から昇る朝日」です。太陽が空の色を変えながら水平線の彼方からゆっくりと昇ってくるさまは圧巻! 早朝から漁をする小さな漁船が、また独特の風情を演出してくれます。

南イタリアの香りがする旧市街

南イタリアの香りがする旧市街

今回、アドリア海から昇る最高の朝日を目指してぜひ訪れて欲しいのが、州のほぼ南端に位置する町、 ヴァスト(Vasto)。キエティ県で二番目の人口規模を誇るこの町は、ローマ史以前、フレンターニ族が築いたとされる旧市街を中心に小高い丘の上に広がっており、海側は美しい海岸線と漁船や貨物船が行き来する港を有しています。州の玄関口であるペスカーラ中央駅から鉄道なら約1時間でヴァスト=サン・サルヴォ駅にアクセスできるので、そこから発着している路線バスを乗り継げば旧市街や海沿いのリゾートエリアへの移動も容易です。朝日を拝むなら海岸沿いに点在する宿泊施設がオススメで、天候を考えると、ぜひ複数日泊まりたいものです。細い路地が迷路のように続く旧市街からは水平線が見え、洗濯物を揺らす潮風が南イタリアの香りを運びます。町の中心にある聖ジュセッペ聖堂の脇の細い道を抜けた先に広がる海のパノラマは、必見です。

自然保護区に指定された海岸とトラボッキのある風景

自然保護区に指定された海岸とトラボッキのある風景

© Daniela Taraborrelli | Dreamstime.com
ヴァストの海岸沿いはこの地域に残る伝統漁の小屋「トラボッコ(複数でトラボッキ)」が多く点在しており、アドリア海南部特有の風景を作り出しています。町の北側に位置するヴァスト港にはイタリアで二番目に高いプンタ・ペンナ灯台(高さ70m)が立ち、船乗りたちを見守っています。また、港の以北は海岸線を中心に「プンタ・アデルチ自然保護区域」に指定されており、透明度の高い海や自生植物に加え、伝統的な農業景観としてオリーヴ畑やブドウ畑なども保護されています。プンタ・アデルチの岬には無舗装の遊歩道があり、徒歩や自転車で岬の先端まで行けるようになっています。現在、オルトーナからヴァストにかけて廃線を活用した自転車・歩行者専用道の整備が進んでいるので、自然を身近に感じながら過ごしたい人にオススメのスポットになっていくことでしょう。
海と丘陵地を有する町の豊かな食

海と丘陵地を有する町の豊かな食

丘と海に発展したヴァストはその食文化も多様です。陸地で作られる代表的なものは、スローフードにも認定されている「ヴァスト風ヴェントリチーナ(Ventoricina del vastese)」と呼ばれるサラミです。地元のパプリカや香辛料を使った楕円状の赤いサラミで、3ヵ月以上熟成させ独特の風味と辛味を持つのが特徴です。また、海辺では漁師たちが食べていたとされる魚のスープ「ヴァスト風ブロデット(Brodetto alla vastese)」がよく知られています。海辺のトラボッコを改装したレストランでは海の上で食事ができ特別感があります。旧市街には、肉と魚両方の郷土料理が味わえるレストランも点在しており、カルドレスコ城が建つ広場の脇にある「リストランテ・ラ・トランスマンツァ(La Transumanza)」もその一つ。アットホームな雰囲気の中で、定番の郷土料理に加え、旬の地元食材を使った料理が味わえます。

リストランテ・ラ・トランスマンツァ(La Transumanza)
住所 Corso Giuseppe Garibaldi, 31, 66054, Vasto (CH)
営業時間12:00〜16:00、19:00〜24:00
休日オフシーズンに1週間程度の休暇あり(FBで告知)
FBhttps://www.facebook.com/Ristorante-La-Transumanza-425462374312021/

保坂 優子

都市計画コンサルタント。アブルッツォ州での留学経験を経て、2002年から大阪とアブルッツォを行き来する生活を続けている。2009年のラクイラ地震を機に州の紹介サイトを立ち上げる。2016年4月からフリーペーパー「アブルッツォ通信」共同発行者。アブルッツォに関する講演やイベントの企画、コラムの寄稿などにも携わる。

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