IGP印 マテーラ独特のハード系大型パンを名店で体験|やっぱりイタリア好き コラム

IGP印 マテーラ独特のハード系大型パンを名店で体験

IGP印 マテーラ独特のハード系大型パンを名店で体験

イタリアテレビ局Rai1の朝の人気番組で司会者が、マテーラのパンを「イタリアの傑出したパンの一つ」とたたえましたが、6千万のイタリア国民も、まずは承服してくれるのではないでしょうか。
マテーラは、パンとフォカッチャがすばらしくおいしい。そしてそれがびっくりするほど安い。土地の小麦を使い、天然酵母をゆっくりと発酵させ、薪窯で焼く。ナポリ王国の時代から連綿と続く、マテーラのパン作りを体験しませんか?

マテーラでパンと言ったらこれ。

マテーラでパンと言ったらこれ。

photo©Cifarelli
500gがたったの1.35€。マテーラが誇る主食にして、日々10時間もかけて作られる大型のハード系パンのお値段です。 材料は、パスタの原材料でおなじみ硬質小麦粉、水、旬の果物から起こした天然酵母、塩、1%以下のビール酵母のみ。いかにもシンプルですが、例えば、マテーラのパンの名店チファレッリでは、季節により午後8~9時より発酵種を仕込み始めて、焼きあがるのは、翌朝の6時15分です。 香ばしさがくせになる皮目は厚さが3㎜以上、もちもちとした中身は大小の気泡が入る等々、IGP印*の「マテーラのパン」を名乗れるのは、原材料の産地に始まり、製法の決まりを一つ一つ順守して作られたものだけなのです。
*IGPとはEUにて伝統的な食品の品質を保ち保護するための制度で、「マテーラのパン」以外のパンが「マテーラのパン」という名称を使えないように保護されています。
マテーラでパン屋業が成り立つのは60年代以降?!それ以前のパン作りは、主婦と石窯屋さんのコラボレーション

マテーラでパン屋業が成り立つのは60年代以降?!それ以前のパン作りは、主婦と石窯屋さんのコラボレーション

パンを運ぶ様子。左写真:パン塊が3つ、これで一家族分(1953-55年撮影。季刊誌『MATHERA』第7号)
ナポリ王国の時代からほんの60年ほど前まで、おいしいだけではなく、1週間も日持ちするパンのレシピを伝えてきたのは、ごく普通の主婦たちでした。 マテーラのパン作りは週に一度。各戸でパン種を大切に継ぎ足し、家族の1週間分のパンを作りました。10㎏にもなったという生地は、こねるだけで1時間、発酵には〆て12時間もかかったそうです。マテーラの女性は皆当たり前のようにパン職人でした。 ただし家にパン窯はなく、1地区に1軒という感じでした。一度に平均300㎏のパンが焼けたという石窯屋(フォルノ)があって、一斉に生地を持ち寄ると、フォルナイオという専門の職人が、生地を独特のかたちに丸めて、いい塩梅に焼いてくれるという寸法です。


生地の成形と焼成がプロの仕事でした。 Matera2019公式プログラムBreadway ©Rocco Figliuolo

時には、石窯の中の「場所の取り合い」でひと悶着あったりしながらも、女たちはパンを持ち寄るついでに、おしゃべりに花をさかせたんだとか。フォルノは集まった女性の街角サロン、今風に言うならサードプレイスでもあったわけです。それにしても、IGP印のただならぬおいしさと日持ちのよさを両立させてみせたのは、マテーラの女性とフォルナイオという庶民の集合知なのですから、驚きです。
うるさ方のご贔屓を満足させて70年。創業1947年のチファレッリで、大人の社会科見学

うるさ方のご贔屓を満足させて70年。創業1947年のチファレッリで、大人の社会科見学

チファレッリの3代目マッシモさん(左から2人目)はパン職人であり、マテーラのパン保護協会の若き会長でもある
一口にマテーラのパンと言っても、パン屋さんごとに個性があって、市民はたいてい贔屓の1軒があります。チファレッリも「半㎏、よく焼けているけど、焦げていないものね」などと注文するお客さんが、ひっきりなしに往来する人気店の一つです。 こちらで(おそらく)日夜パンの事だけを考えているのがマッシモさん。初代は生粋のフォルナイオでした。その祖父から受け継いだマテーラのパンの意義を正しく理解し、IGPの認定に尽力したのがマッシモさんでした。その時若干28歳。日々パンもつくり、マテーラのパン全体の盛り上げに飛び回り、地元のちびっこなど見学希望者も自らもてなしています。
70年かわらぬ素っ気ない工房の、でんと据えられた薪窯の前で、水を得た魚のように生き生きとしたマッシモさんの口から、サッシの町の歴史と硬質小麦のおいしいパンの関係、初代の頃のパン作り、なぜこの形であるべきか? などなど、次々に説き明かされていきます。 マテーラにもっと愛着がわくこと請け合いの講義&ラボの後は、ぜひパンのテイスティングを。試すのは硬質小麦と石窯が育んだマテーラ伝統レシピの「チファレッリ謹製」。パン、フォカッチャから、タラッリ、ビスコッティに地ワインもついた、簡単な食事になってしまいます。気に入ったものがあれば、隣接のお店で買えるのもうれしい限りです。
Panificio Cifarelli(パニフィーチョ・チファレッリ)
住所07:00~14:00/16:00~21:00
営業時間07:00~14:00/16:00~21:00
電話+39 0835 385630
HPhttp://www.panificiocifarelli.it/

白旗 寛子

1974年生まれ。2003年からマテーラ在住。イタリア人の胸を借り、バジリカータ州広域にて、取材および番組コーディネーター、通訳・翻訳、日本語・伊語で執筆ほか。

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