イタリアで唯一の技法で作る、スクイラーチェ村の陶器|やっぱりイタリア好き コラム

イタリアで唯一の技法で作る、スクイラーチェ村の陶器

イタリアで唯一の技法で作る、スクイラーチェ村の陶器

ラメッツィアテルメ空港から車で約1時間。州の中東部・カタンツァーロ県の丘の上のスクイラーチェ(Squillace)村。かつては主要家内工業が集まり、税務署・裁判所などの行政機関も集中していた、カラブリア州東岸で最も栄えていた村でした。この村に伝わる陶器は、イタリアでも唯一と言われる技法で作られます。戦後復活した伝統の技法を今に伝える陶器工房を訪れます。

イタリア唯一の製法。スクイラーチェの陶器の作られ方

イタリア唯一の製法。スクイラーチェの陶器の作られ方

まず成形から作業を行います。村の近郊で取れた赤土をこねて成形し、数日乾燥させた後に、今度は柔らかくした白色の土を刷毛で塗り付けます。さらに数日乾燥させ、釜入れをしない生の状態で、釘に似た道具を使って絵柄を入れます。絵柄は柄見本があるものの、基本的にフリーハンド。釘状の道具で削るように入れられ、細かい模様も使う道具の太さ・形状などを変えながら入れられます。絵柄を入れたら窯で焼き上げ、できあがり。イタリアで唯一と言われるのは、この「生」の状態で削るように絵柄が入れられることと、1度しか窯入れされないことがゆえんとなっています。釘状の道具で白色の土が削られた部分は本来の赤土の色が出て、赤と白の2色のみによって装飾されることから「貧しい陶器」とも呼ばれました。

世界に散らばる、スクイラーチェ産の陶器

世界に散らばる、スクイラーチェ産の陶器

赤と白のみで装飾される方法に加え、できあがりにさらに色を付けて2度焼きする方法も古くから用いられてきました。贅沢な2度焼きの陶器はヨーロッパ中の王侯貴族に愛されていたようで、各地の美術館や博物館に素晴らしい作品が展示されています。スクイラーチェの陶器の伝統は、人口の流出や度重なる戦争などが原因で一度継承が途絶えてしまいますが、戦後伝統工芸の復興運動が高まり、現存していた教本とイタリア各地の陶器の村の元にスクイラーチ伝統工芸士養成コースが設立され、コース修了者たちによって村内に陶器工房が復活しました。この伝統復活の際、最も重要な役割を果たしたのが各地に散らばるスクイラーチェ産の陶器。教本からだけでは伝わらなかったであろう細かな技法を現代に伝えたのは、かつて村で作られ、各地へ散らばっていった作品だったと言われています。

現代のスクイラーチェの陶器

現代のスクイラーチェの陶器

近年に入ると、伝統的な技法と他地域の「絵付け」の技術を融合させた作品も登場するようになりました。これにより、さらにカラフルで日常使いしやすい作品もたくさん生産されています。村内に数ある工房では、それぞれが特色のある作品を発表。地元では、特色あるこの陶器を結婚式の引き出物にすることも多いんだそうですよ。食器だけではなく手軽なお土産品として、クリスマス飾りやアクセサリーなども大人気です。工房では、絵付けも体験することもできます(要予約)。

スクイラーチェ産陶器を見ることが出来る美術館・博物館(一部)はこちら。
カポディモンティ美術館/ナポリ(Museo di Capodimonte)
ビクトリア&アルバート博物館/ロンドン(Victoria and Alberto Museum)
大英博物館/ロンドン(British Museum)
メトロポリタン美術館/ニューヨーク(Metropolitan Museum of Art)

澤井 英里

カラブリア州コセンツァ(Cosenza)市在住。司法事務所勤務の傍ら、こよなく愛する州の紹介や現地在住コーディネーターとして各種ご案内に対応。スキーが大好きな食いしん坊ソムリエ。 素朴ながらも豊かな郷土料理とそれを支える自然環境・人・四季に寄り添ったカラブリア州での生活に美しさを感じます。

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